エイチームの決算に見る、「Qiita」買収によるシナジーと今後の可能性
[本日のアジェンダ]
ご無沙汰しております。
ザーニーです。
つい先日、以前ブログで取り上げ下いたエイチームの2018年7月期2Q決算説明会が開催され、2Qの決算資料が開示されました。
やはりQiita買収について、どう説明があるのか気になるところですし、今後の事業のQiitaを含めたエイチーム全体の方向性に関して、色々と予想してみようと思います。
↓以前エイチームについて取り上げた記事です。
kattenikaisyawokiru.hatenablog.com
エイチーム2Q決算発表の振り返り
さっそく最初のスライドでQiita買収に関して触れられておりました。
まずはエイチームがQiitaを買収した意図とその効果に関して考えていきましょう。
今回の買収により、特にエンジニア人材に対する『エイチーム』という会社の認知度を向上させることに成功したと思ってます。
これにより新卒・中途両方で優秀な技術系人材の確保がより一層期待がもてますし、社内社員のモチベーションも向上させることが出来たのはとても良い効果が期待できます。
また、今まで手掛けていなかった情報共有サイト事業へ参入を果たし、新しいビジネスモデルのノウハウも活用していけるので、事業としての可能性も広がりそうです。
ただ懸念点もあり、
- 既存事業とのシナジーは?
- Increments単体での黒字化は?
- 買収金額が約14億円って相場としてどうなの?
この上記3点がどうしても個人的には引っ掛かります・・。
そこでまず、Qiitaのビジネスモデルに関して確認してみましょう。
上記スライドのように主に二つの収益モデルで成り立っています。
一つ目が広告課金モデル(上記図の左側)で、もう一つが社内共有用として運用される課金モデル(上記図の右側)となってます。
Qiitaの利用者や利用頻度自体はグラフを見る限り増え続けているので、更なる成長も期待出来そうです。
ただ、やはり今現在エイチームが行っている事業とのシナジーという面では、直接的にはあまり効果があるとは言えないかと思います。
また、Increments単体での黒字化に関してですが、恐らくすぐに黒字化させることは考えていないと思われますので、先行投資してサービス認知度及び利用者をより増やしていくようにしていくものと思われます。
その意味では今の既存事業でいかに売上を伸ばし、利益を残せているかが重要になってきますので、次は既存事業の結果について見てみましょう。
上記3枚のシートを見ていただくと、
エンターテイメント事業とライスサポート事業が大体同じくらいの売上になっております。
これは後程それぞれの事業ごとの売上・利益を確認していきますが、2Qではエンターテイメント事業が伸び悩み、ライフサポート事業が伸びたので、売上比率が同程度になったようです。
2Qだけの数字でみると、売上がYoYで112.5%で成長しており、営業利益率11.9%なので、売上・利益もまずまずといったところでしょうか。
では上記2つのシートを見ながらエンターテイメント事業から見ていきましょう。
まず売上・利益に関してですが、Qごとで見てみると1Qとほぼ同程度の売上高と利益になっております。
昨年と比較してみると、今期はなかなか伸び悩んでいるようです。
またその要因は2つ目のシートのを見てみると、国内の売上高が急激に下がっているのが確認できます。
決算説明会の質疑応答の中でも触れられていましたが、主力ヒットタイトルの『ヴァルコネ』が売上が減少傾向にあり、また他の既存タイトルも微減しているものもあるとのことなので、利用者が減ったのかそれとも施策が当たらなかったのか分かりませんが、タイトルがリリースされてからの年数を考えると、ゲームの寿命で利用者が減ってきているのが売上高にも影響が出始めている時期なのかもしれません。
次にライフサポート事業に関して、上記3つのシートで見ていきましょう。
売上高はQで過去最高を記録し利益率もこれまでと同水準をキープしているので、売上・利益共にとても上手くいったQではないでしょうか。
セグメント別に見てみると全セグメントが成長していますが、特に『金融メディア』が急成長しているのが分かります。
つい2年程前までは、エイチームといえば『ハナユメ(旧すぐ婚ナビ)』と『引っ越し侍』のイメージの会社でしたが、ここにきて金融系サービスが新しい柱になっているのが分かります。
グラフを見るとサービスを開始してたった丸4年で、ライフサポート事業で一番売上を上げる事業に成長させたのがすごいです。
また、粗利率はほぼ一定水準で、CPA(顧客獲得1人当たり広告コスト)とARPU(利用者1人当たり売上)が順調に成長しているので、ライフサポート事業に関しては不安はなさそうです。
と、こんな感じで2つの既存事業を見てきましたが、エンターテイメント事業に不安がありますが、安定的に収益を生み出してくれるライフサポート事業が成長してくれているので、Qiitaにもしっかり先行投資ができそうです。
Qiita買収価格は適正か?
では次に、懸念点で三つ目に挙げていたQiitaの買収価格に関して、適正価格であったのかどうかを見てみたいと思います。
といっても、何をもって適正と判断するのか非常に難しいですので、おそらくエイチームの経営陣はこう判断して買収したんだろうな、という推測で論じていこうと思います。
まずQiitaの買収ですが、買収金額は約14億円とのことでした。
なので売上マルチプル(買収金額÷売上高)だと約18倍になります。
<計算式>
売上マルチプル:買収金額(16億円)÷売上高(約8,900万円)=17.9倍≒約18倍
で、この18倍という数字が高いのか安いのかを判断するためには、Qiitaと似たサービスを運営している会社の数字を見てみる必要があります。
ということで調べてみると、アトラシアン社という会社が『Confluence』という情報共有サイトを運営する会社がナスダックに上場していたので、そこから売上高と株式時価総額のデータを利用して計算してみようと思います。
アトラシアンの市場価値:時価総額(5.159,240千ドル)÷売上高(619,936千ドル)=8.3倍≒約8倍
※時価総額は今記事作成中の2018年3月25日時点でのもの
上記の計算にもあるように、同じようなサービスをグローバルで展開しているアトラシアン社は、売上高に対して約8倍の市場価値がついていますが、エイチームはその倍以上の売上マルチプルでQiitaを購入したことになります。
確かにアトラシアン社とは違うので計算ですべて評価できないと言われればその通りなのですが、一応同じような事業をしている会社で比較しているので、そこまで大外れはないと考えてよいかと思います。
またエイチームの経営陣もQiitaを購入する際に、このアトラシアン社の約8倍というのもひょっとすると見ているのかもしれません。
この数字を見ていたというていで続けると、経営陣が18倍でも購入する意思決定をした理由としては、やはり(どこの業界も同じですが)IT業界にとって優秀な人材の獲得がいかに大変で且つ大切かというところを物語っているように思います。
それほど、エイチームは人材獲得というところに危機感を抱いていたのかもしれません。
(やはり名古屋が本社ということで、東京のIT界隈から地理的に遠いことが、影響ありそう・・。)
Qiita買収によるシナジーと今後の可能性
Qiita買収に伴うシナジーと今後の可能性ですが、何度かお話したように既存事業のシナジーはあまり期待できなさそうなので(ごめんなさい・・。)、一番大きな期待しているのは、IT界隈で著名な方がエイチームにジョイインすることかなと思います。
あとは、エイチームのお金を利用し、Qiita自体の更なる成長をしていくことで、新しい収益の柱になってくれることを期待しております。
では本日はこの辺で。