Criteoとヤフーの決算書に見る数字のカラクリについて
- Criteoってどんな会社?
- Criteoとヤフーの決算資料から見る数字のカラクリ
ご無沙汰しております。ザーニーです。
以前の投稿からだいぶ時間が経ってしまいました。
本日は、日欧のweb広告会社の決算書から、それぞれの特徴を見ていきたく思います。
Criteoってどんな会社?
Criteoってどんな会社かご存知でしょうか?
IT界隈に勤めていると、名前は聞いたことあるって方もいらっしゃるかと思いますが、簡単にご説明させていただきます。
Criteoはフランスのパリに本社をおく リターゲティング広告の会社です。
(※ダイレクトマーケティングに関しては、分かりやすい説明をしているサイトがあったのでこちらを→https://liginc.co.jp/209434)
ホームページ内にCriteoのサービスに関して簡単にまとめているものがあったので下記を確認してみてください。
まあCriteoがどんな会社かを知ってる方はそこそこいらっしゃるかもしれませんが、ではグローバルでの年間の売上高や利益がどれくらいの規模かご存知でしょうか?
下記がとあるデータベースから出力してきた貸借対照表(以下B/S)及び損益計算書(以下P/L)です。
■B/S(円レートに変換済み)
■P/L(円レートに変換済み)
(非常に見づらくて申し訳ございません・・。)
Criteoとヤフーの決算資料から見える特徴
先ほどの資料は、Criteoが決算書に出している科目と同じ名前のままでまとめております。
ではまずP/Lから見てみると、YtoYで130と高い成長率であることが分かります。
また、R&Dに毎年売上比7%も費やしていることからも、変化の激しい業界内で生き残っているためにR&D部門への投資は一定比率必ず行うことを決めているのでしょう。
また営業利益率が30%前後と一般的な企業と比べて非常に高収益であることが分かります。
翻ってB/Sを見てみると、目につくのはまず自己資本比率の低さでしょうか。
欧州の企業の決算書を多くは見たことはないので、傾向かどうか分かりませんが、50%程度であることに驚きました。
借入で資金を入れて、どんどん投資しているのでしょうか。
また、のれん(goodwill)が一年で約200億円増加しているのを見ると、どこか買収したのでしょうか・・?(情報がなくてすいません・・泣)
で、ここでネット広告系あるあるなのですが、
P/Lの上から二つ目に、『Traffic acquisition costs』というのが分かるかと思います。
一般的には売上原価に入るのですが、簡単に言うと提携サイトに支払わなければならない手数料のようなものらしいです(詳細には分からないですが、広告だと送客されることで売り上げがあがるのであれば、一送客あたりに支払う手数料のようなもの、という認識でよいのでしょうか・・笑)。
で、これに関しては60%近くもあります!
Googleでも21%で高い!という記事があったくらいなので、相当高い数字だといえるでしょう!
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-07-24/OTM6TH6S972801
では、日本のweb広告企業のヤフーを見てみましょう。
ちなみにヤフーは、先ほどの『Traffic acquisition costs』は記載されていません。
というのも、ヤフーの売上高の報告として、全売上ーTraffic acquisition costs=決算書の売上高として報告しているためです。
この辺りも企業や投資家の考え方によって、決算資料の出し方が異なるのが面白いですね!
ちなみに最近リリースした決算資料だと、
大体、ヤフーの四半期売上高がCriteoの年間の総売上高と同じ規模になるでしょうか。
またヤフーのメディア事業だけだと、
年間の売上規模とCriteoの規模とだと同じ程度になるようです。
驚くべきは営業利益率ですね!なんと60%近くもあります!
でもこれにはトリックが隠されているのです!
先ほども触れたように、ヤフーの売上高にはCriteoのように『Traffic acquisition costs』がすでに除かれています。
そのためヤフーにも、もしCriteoと同等程度の『Traffic acquisition costs』が計上されているとしたら、
43,988(営業利益)÷72,828(売上高)÷40%(Criteoの『Traffic acquisition costs』は60%であるので)=24%(営業利益率)
となってしまい、Criteoの方が営業利益は残せているということが言えてしまします。
つまり各企業のIR情報のの出し方によって、何を伝えたいのか、どうしてそのように伝えているのか、を読み解かないといけないかなと思います。
恐らくCriteoとしては、『Traffic acquisition costs』の率を下げることが命題にあるとはいえ、現状の高い原価率であっても高い営業利益率を残すことが出来ていることをアピールすることが狙いかもしれませんし、ヤフーからすると『Traffic acquisition costs』除くことが本来稼いだ実力を過小評価されないためにそのように出しているのかもしれませんね。
では本日はこの辺で。