ラクスルの決算資料は、メッセージの伝え方が非常に上手な件について

[本日のアジェンダ]

  • ラクスルの業績の振り返り
  • ラクスルの上手な伝え方

 

ご無沙汰しております。どうもザーニーです。

投稿が久しぶりになってしまいました・・。

 

最近記事にできそうな会社を探していたのですが、会社の先輩がとあるイベントで「ラクスルの決算資料はとてもメッセージ性があって上手いらしい」と聞いたらしく、どんな決算資料になっているんだろうと見にいくと、とても分かりやすく、メッセージの伝え方がとても上手だなって思いました!

 

特にIR部門の方にとって、金融機関や投資家向けに自社の業績や今後の戦略を伝えることは非常に大切で、伝わるIR資料を作成するのに苦労されている方が多くいらっしゃると思います。

そういう方たちや、そうでない方もラクスルのメッセージの伝え方は非常に学べるかなと思いますので、一緒に見ていきましょう!

 

ラクスルの業績の振り返り

まずラクスルの業績について振り返ってみましょう。

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まず通年の業績で見ていくと、111億円の売上高でYoY45.6%という高い成長率を達成してます。また、営業利益も1Qまでは赤字でしたが2Q以降は黒字に転換し、通期で営業黒字9300万円を達成したようです。

 

高い成長率を維持しなかがら、赤字だった事業が黒字になってきたというのが分かります。

 

ちなみにラクスルの事業ですが、大きくは二つのサービスを行ってます。

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一つ目は「ラクスル」というサービスで、印刷・広告のシェアリングプラットフォームを運営しており、二つ目は「ハコベル」という物流のシェアリングプラットフォームを運営しているので、二つともシェアエコ系の事業をしています。

 

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上記の決算資料でも記載されているように、「ラクスル」の事業だけでも国内の印刷事業に市場規模は最大3兆円の市場規模に対して、国内のオンライン印刷市場は約3%程の920億円だけしかまだないが、欧米では15%もオンラインでされており、オンラインのシェアは今後伸び続けることを考えると、大きなポテンシャルがあることがうかがえます!

 

業績に簡単にまとめてみると、

①四半期で今期より黒字に(通年でも黒字化達成)

②成長率YoY45.6%で急成長中

③印刷の市場規模も大きく、オンライン化のシェアの拡大も期待できるため、ポテンシャルも高い

というとてもよい材料がそろってきているように、決算資料からは見て取れます。

 

では、そのラクスルですが、IR資料のどの点が「伝えた方が上手い」のかを見ていきたいと思います。

 

ラクスルの上手な伝え方

 ラクスルのIR資料を見ていて、とても上手に伝えているなと思ったのが下記の図になります。

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よくいろいろな決算説明会や資料の中で利益率の指標として一番用いられるのは、営業利益率やEBITDA率になるかと思います。

これは営業利益とは、いわゆる本業で稼ぎだした利益というところで、その企業の稼ぐ力や利益を残しやすい体質かどうかを測ることができます。

 

ただ、ラクスルはあえて売上総利益率を前面に打ち出し、その指標で評価してほしい!と言っています。

これはなぜでしょうか?

 

まず一つ目の図をみていただくと、

売上→顧客からの信頼

売上総利益→顧客やサプライヤーへの付加価値

と記載されています。

非常に定性的な表現にはなりますが、売上を上げるには顧客から信頼されるサービスを提供しないといけない、そしてその事業活動の中で顧客に付加価値を認めていただくことで、事業の継続を顧客やステークホルダーに承認されることと同義が、利益を残せたということである、というのを伝えたいのかと思います。

 

もうすこしP/Lを用いて説明すると、営業利益とは、売上から原価を引いた売上総利益より、販売管理費及び一般管理費を除いたものを指します。

つまり、広告宣伝費などを差し引いた営業利益で判断されるのではなく、会社の企業価値や存在意義をより如実に示すのは売上総利益であるので、ここが黒字であることに注目してほしいというメッセージをこのシートで伝えていると思われます。

 

※数式

売上-売上原価=売上総利益

売上総利益-販売費及び一般管理費=営業利益

 

実際に、広告宣伝費に関するシートも後のほうで出しておりました。

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販売管理費率や広告宣伝費率がどんどん下がっている一方で、売上や売上総利益はしっかり残せてますよ!

広告の投下効果で売上を上げているわけではなく、サービスとしてとても支持されているから伸びてます!というのをしっかりアピールするのに、とても良い資料です。

 

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また先ほどの売上の図にあった売上のKPIを因数分解すると、

『売上=顧客数×ARPA』

となっており

『ARPA=注文回数×購入単価』

と記載されておりました。

 

つまり売上を上げるには

①顧客数を増やす:ユーザー認知&新規の利用者(社)を増やす

②購入回数を増やす:リピート率の向上

③購入単価の向上:商品単価やセット販売への導線つくり

上記三点をどれかやすべてをうまく上げていくことが大切になります。

 

そう考えると先ほどの図を見ると、どの指標も前年比UPしており、とくにユーザー数がめちゃめちゃ伸びているのをみると、業界のメジャーサービスとしての地位を確立し、ARPAは後に上げていくことになるようです。

 

戦略としては、とても筋の通ったやり方かなと感じます。

大きな市場規模をしっかりとっていくために、まずユーザー数を獲得していく、しかも広告宣伝費をガンガンかけているわけでもない、という点がとても会社としてうまくはまっているし、その自分たちの会社の価値や将来性を伝えるのが上手いなと思いました。

 

売上総利益こそ投資家に見てほしい!や、ROEを見てほしいといった「指標」なるものはあふれているので、ラクスルのように各会社が本当に見てほしい指標、その意図などをしっかり考えてIR決算を作成していくことが大切だなと改めて感じます。

 

ちなみに戦略についてですが、「顧客数」×「ARPA」というシンプルな指標で業績を説明する会社も最近多く、各会社ごとにどの指標を今期注力するのかみたいなことを発表しているのですが、その戦略がその企業にとって適切かどうかをいろいろな会社の決算資料を通して考えていくのも面白いですね。

 

本日はこのへんで~