不動産テクノロジー銘柄だったGAテクノロジーズとLIFULLの二社で、時価総額で大きく差がついてしまった理由を考えてみた

[本日のアジェンダ]

  • 両社のビジネスモデルについて
  • 理由①:コロナ下における売上高成長率
  • 理由② :LIFULLの対競合戦略
  • 理由③:メディア事業より業績の読みやすいSaaS事業が好まれがち
  • 最後に

 

どうも。ザーニーです!

あけましておめでとうございます!2021年もどうぞ、よろしくお願いします!!

新年一発目のネタですが、最近下記のようなツイートが流れてきまして・・・。

 

 

 

元職場のLIFULLが取り上げられていたので(しかもイケてない側で泣)、ちょっとこの二つを比較してみようと思います!!

 

ただ、このツイートに対するリツイートでいくつもあるように、そもそも両社はビジネスモデルがだいぶ違うのにも関わらず、同じ土俵で比較していること自体おかしいのではないか?という意見が複数あり、確かにおっしゃる通りです!

 

なので、両社の売上規模や利益率などを比較していくようなナンセンスなことはしません!笑

 

ただ、(このツイートの投稿者がどういう意図でのものかは定かではありませんが)、この両社は個人的には不動産テクノロジー(Re-teck)の期待感の高い銘柄である(であった)点については共通していると思うので、そのあたりの話を軸に両社を比較していきたいと思います!

 

不動産テクノロジーに興味のある方や、単純になんで両社に差がついてしまったのか気になる方はぜひ見ていただけると嬉しいです!

 

 両社のビジネスモデルについて

ではさっそく両社のビジネスモデルについて簡単にみていきましょう!

まずGAテクノロジーズですが、いわゆる不動産の本業を生業としており、toBtoCサービス両方を展開しています!

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↑二つがtoC向けのサービスにおけるビジネスモデル概要

 

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toB向けサービス

上記の概要図にあるように、投資用不動産を仕入れてきてそれを販売するというビジネスモデルや、貸したい人借りたい人売りたい人買いたい人をつなげるプラットフォームを展開し、その中でGAテクノロジーズとして不動産業を行うというビジネスと、不動産会社向けのSaaSツールのサービスを展開しており、管理会社向けと仲介会社向けにそれぞれ展開しており、手広く不動産DX事業を展開しているといった感じです!

 

一方のLIFULLのビジネスモデルですが、メイン事業は国内不動産におけるポータルサイトであるLIFULL HOMESを展開しており、不動産会社からの物件情報を掲載してもらい、その広告料を取るビジネスモデルとなっております。

そのためGAテクノロジーズと異なり、不動産業自体は行ってはおらず、不動産会社からの広告収入が主な収益源ということになります!

この点が両社の大きな違いです!

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で、あまり知られていないのですが、LIFULLの不動産領域におけるサービスはメディア事業のLIFULL HOMESだけでなく、サービスラインナップだと上記の図のように多岐にわたります。

他は海外事業で売上の大体15%ほどを占めており、こちらも不動産業によるものではなく、アグリゲーションサイトと呼ばれるいわゆるポータルサイトをもっとまとめたやつみたいなイメージの事業なので、こちらも広告事業になります。

 

上記が両社のビジネスモデルの違いです!

 

そんな両社ですが、どうして約倍近い時価総額の差が発生してしまっているのでしょうか・・・?

 

理由①:コロナ下における売上高成長率

もうまさにこれが大きいとは思うんですが、GAテクノロジーズとLIFULLの業績発表で大きく差が出てる指標は売上高成長率です!

 

GAテクノロジーズの直近の会計期間における売上の成長率は、YoY161%成長とコロナ下である状況が大きな追い風になったことと思いますが、それでも大変高い成長率です!

 

しかも好調なのは売上高成長率だけではなく、売上や利益項目についても業績好調で上方修正したにも関わらす、それをも上回る業績で着地しました!

また、その業績の伸びを織り込むように株価が2Q決算発表後あたりから急激に伸びてます。

 

一方のLIFULLですが、まず売上高成長率はYoY90%と、前期と比べ約10%の売上ダウンとなってしまいました。

また、コロナ前に発表していた当初の計画では通期売上450億円でしたので、売上高成長率YoY115%で見込んでいたものの、コロナにより売上に影響を与えたということになります。

 

また、コロナによる影響でリモートワークが進み、都心ではなく郊外に引っ越したい需要が増加したことで、不動産ポータルサイトトラフィックが伸びている、という情報を聞きました。おそらくLIFULL HOMESもトラフィック自体は伸びている可能性は高いと思われるものの、不動産ポータルサイトの最大の競合であるリクルートが運営するSUUMOがよりユーザーを集めまくって影響で、LIFULL自体の業績にはこのコロナが追い風とはならず、競合をより伸ばすことにつながってしまったと言えそうです・・。

 

競合戦略については、次の詳しく理由②で深堀りしましょう!

よって、上記GAテクノロジーズの業績の良さや成長率の高さによりLIFULLよりGAテクノロジーズの時価総額で大きな差が発生してしまっているかと思います。

 

理由②:LIFULLの対競合戦略

では理由①でも触れたLIFULLの競合戦略についてみていきたいと思います!

LIFULLが特に国内マーケットにおいて競合する市場は大きくは二つで、一つはSUUMOやアットホームなどの不動産ポータルサイト、及び有名不動産会社の自社サイトといった、一般ユーザー向けの不動産サイトです。(toC事業)

 

そしてもう一つが、アットホームや現在GAテクノロジーズと競合しつつある不動産業者向けサービスです。(toB事業)

toC事業においては、業界最大手のSUUMOが圧倒的に強く、かつてLIFULL HOMESが獲得していた物件数もNo1の地位を奪っており、SUUMOにしか載っていない物件が最近増えた印象です。

またCMなどのプロモーションも非常に効果的でユーザー想起も高く、メディア力としては圧倒的にSUMMOに負けているかと思います。

実際リクルートの決算では、不動産メディア事業の一年間の売上が約1000億を超えていたので、単純にLIFULLの約3倍差がついていると言えます・・。

 

また、不動産業者向けサービスも、これまで紙媒体がメインの業界だったこともあり、数年前からLIFULLは不動産業者向けのサービスを作成し進めていたものの、想像以上に導入が進まず、不動産業者間の物件流通サービスでは結局アットホーム(ATBB)に勝てず、不動産業者向けツールについてもGAテクノロジーズに勝てずといったところで、toCサービスもtoBサービスも結構キツいのが正直なところかと思います・・。

(追記で、コロナによるヨーロッパの国々のロックダウンにより、海外事業も減損を出しており、海外事業もキツい・・)

 

 どれか一つでもマーケットリーダーになれる勝ち筋があればよいのですが、正直あまり見えないという部分が、かつて数年前の2016年ごろの株価のピークを最後に、ここ4~5年株価が下がり続けています・・・。

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で、ちょうど2015~2016年というのはLIFULLの株価がピークだったときで、IRでどのようなことが発表されていたかでいうと、ちょうどネクストからLIFULLに社名を変更し、ブランドイメージの刷新を行っていたり、本社移転に伴うメッセージなどを発信している時期です!

また、ちょうどこのころから、顧客数とARPAをKPI指標として開示するようになり、その指標の開示により、顧客数増加戦略やAPRA向上の施策などが触れられ、投資家に非常に分かりやすいうえに、未来戦略に対して非常にクリアになるコミュニケーションだったことで、LIFULLの期待値も高かったと思われます!

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逆に、数年前にLIFULLへ向けられていた不動産業界変革の投資家の期待感は、現在はGAテクノロジーズの方へ向いてしまったことで、両社の時価総額に大きな差が発生しているものと思います。

 

理由③:メディア事業より業績の読みやすいSaaS事業が好まれがち

これは最近の傾向ではありますが、投資家からすると業績が読みやすいSaaSビジネスの方が、ボラティリティの高い(不安定な)メディア事業よりも安心して投資しやすいというのが、両社の違いかと思います!

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GAテクノロジーズの管理会社向けと仲介会社向けのサービスのそれぞれの導入社数とチャーンレートですが、圧倒的に伸びが高い上にチャーンレートが低いので、期待感しかないです笑

この手のサービスは一度導入してしまうとスイッチングコストが高く(というか現状他の競合サービスがあまりないので、スイッチングコストという概念もほぼないかもですがw)継続して収益を上げ続けられるので、投資家からすると非常に安心材料です!

 

一方のメディア事業ですが、LIFULLは上記のようなチャーンレートを開示していないのでなんともですが、そもそも不動産メディアなので、不動産の繁忙期(10~3月)だけスポットでガッツリ掲載して、あとは少しだけ細々と掲載or広告ださない、というような時期的要因&ビジネスモデルということがあり、SaaSのような見せ方が難しい傾向にあります。ある意味繁忙期で一気に業績が跳ねる可能性がある期待感がメディア事業の特徴であり強みでもあるのですが、競合サービスに勝ててない点で投資家からすると魅力に映らないというところで、両社に大きな差がついているようです。

 

最後に

結局感想として、当時LIFULLがしたかったことをGAテクノロジーズが完璧に行ってしまってるなー、という印象でした。

 

これまで色々書いてきまして、元職場の良い未来をもっと書きたかったのですが、GAテクノロジーズとの比較だと正直上記のような感じになってしまうなというのが感想でした・・。

 

(あ、ただ、LIFULL自体は素晴らしいですし、良い点はたくさんあります!今でももう一度新卒で入社するとしたら?と聞かれると真っ先にLIFULL!と答えます! LIFULLの良さについてはたくさんあるので、このブログではなく個人のnoteで色々書きたいと思います。)

 

それでは本日はこの辺で~

(長文にもかかわらずここまでお付き合いいただきありがとうございましたー)